人間を図書館で借りる?ヒューマンライブラリー(Human Library)という取り組み@グリフィス大学

ヒューマンライブラリー
グリフィス大学では、今週「ハーモ二ーウィーク」ということで毎日イベントが行われています。ハーモニーウィークとは、人種や言語や文化が関係なく調和して統合された社会を祝い、多文化共生を呼びかけようという週です。国連が定めた「ハーモニーデー」が3月21日にありますが、オーストラリアでは新たに「ハーモニーウィーク」呼びかけ、国中で一週間かけて多文化社会の意識向上の取り組みを行っています。
そして今日、待ち待った「ヒューマンライブラリー」というものが開催され、参加してきました。

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【目次】
  1. ヒューマンライブラリーってなに?
  2. グリフィス大学のヒューマンライブラリー
  3. 一冊目:多文化主義主唱者
  4. 二冊目:ムスリム捕虜
  5. 三冊目:アボリジニ女性老人
  6. まとめ
ヒューマンライブラリーってなに?
ヒューマンライブラリーとはその名の通り、人間を借し出す図書館です。
The Human Library Organization is a global movement working to build spaces in the community for personal dialogue about issues that are often difficult, challenging and stigmatizing. 
We publish people like open books on a given topic. Our readers ask questions and get answers from their "book".
We and our local partners deliver events in civil society through libraries, universities, festivals, high schools, colleges, conferences and social happenings.
Currently the Human Library has been presented in more than 70 countries worldwide. (Facebook page, the human libraly organization)
2000年にコペハーゲンで始まったこの活動は瞬く間に世界中に広まり、今では70カ国以上でイベントが開催されています。
Human liberally organization http://humanlibrary.org というものがあり、世界中に広がるこの活動の拠点となっています。
目的は、その人たちが背負っているバックグラウンドやレッテル(宗教や民族や職業等々)によって生まれる偏見や差別を深い対話により、取り払おうというものです。
 
グリフィス大学のヒューマンライブラリー
今回グリフィス大学で行われたヒューマンライブラリーについて紹介します。
詳しく知りたい人はこのリンクから飛んで見てください。
Borrow a person in our Human Library どんな人が「本」として登場したのかというと、トランスジェンダーイスラム教徒、アクティビスト、未亡人、養子、アボリジニ人、ゲイ、都市農民、盲目、等々、様々な価値観や障害を持った人たちがその人たちの視点で語ってくれました。
自分はその中で、3冊の本を借りました。
1.多文化主義主唱者
2.ムスリム捕虜
3.アボリジニ女性老人
多文化主義主唱者
1人目がMulticultural advocateというタイトルの本でした。大学で勉強するためにインドからオーストラリアへ渡ってきた彼女。いつもあったのは、人種や国によって隔たりが生まれることでした。インド系の人はいつもインド系で固まり中国系はいつも中国系で固まります。
大学卒業後働きながら趣味で始めた写真がきっかけでファッションの分野に関わるようになった彼女。ただで自分が楽しんでいるいろんな文化のファッションをみんなでただで楽しめるプラットホームを作ろうと取り組み始めたのが今の主活動の原型である多文化ファッションショーです。
そして、これを続けること7年間、ついに多くの人に受け入れられるようになり、今では170以上、70カ国の人々が一堂に集結するファッションイベントを主催するようになりました。
彼女の持っている視点として、タイトルにもあるように多文化主義主唱者というものがあります。
自分も彼女と似たような立場で彼女のいうことにはとても共感することが多かったですが、文化の違うコミュニティの人たちの隔たりがあり、その壁を取り除いて受け入れてもらいっていくことはとても難しいです。
オーストラリアにいる人は、本当はいろんな文化の人と交わりたいと思っていたのに、快適な場所から出たくないから殻から出たくない。
彼女は、インド人として中国人のコミュニティに飛び込み受け入れてもらい、中国系コミュニティの副代表を務めてたりもしています。
この彼女からもらったアドバイスは、とにかくdevoteするということでした。献身的に努力を捧げていくことで認めてもらえるということでした。
彼女の目は、とってもここ最近で見た人の中でもっともキラキラしていて希望に満ちていました。挑戦する人だけが得られる輝きでした。
ムスリム捕虜
2人目がMuslim POW (prisoner of war) というタイトルの本でした。
ドバイ出身の38歳の彼。17年前のその日、彼はパイロットになる夢を諦めて、アメリカで飛行機を作るための「航空工学」の勉強をしていました。
そして、2001年9月11日、9.11テロがアメリカのニューヨークで発生しました。
すると、数日後、彼の自宅に警察官がやってきて取り調べを始めました。
「自分はなにもしていない。」
あったのは、ドバイという国籍とイスラム教徒であるということ、そして航空工学を学んでいるということだけでした。
そして、9ヶ月間、窓のない牢獄に閉じ込められ、繰り返される尋問、お前はあの時どこにいた?飛行機は作ることができるのか?遠隔で操作することはできるのか?テロに関わったのか?
彼にとっては、全く意味のわからない、そして、彼のもっているアイデンティティを痛めつける体験になりました。そして、それは今でもPTSD心的外傷後ストレス障害)として彼を苦しめています。
ゲージに閉じ込められた鳥を見ると、すぐにでもゲージから出して自由にさせてやりたい!そんな視点を得ました。
彼の得たレッスンは、自分のいるべき場所、タイミングには気をつけないとといけない。
周りに環境は仕方がない。自分がそこに巻き込まれないように振る舞おう。
どうしようもない、不可抗力があります。
今でもアメリカには自由に行けません。
彼の背負っているバックグラウンドが彼の人生に大きな影響を与えています。
話を聞いていて、途中何度か泣きそうになるくらいに、酷い話でした。おかしいだろ!と何度も叫びたくなりました。けれど、それは彼が一番そう思ってきたことです。
そして、話している彼も最後の家族との再会の話では涙を流していました。
アボリジニ女性老人
そして、最後に借りた本はaborigine elder womenでした。
アボリジニコミュニティに生まれた彼女。オーストラリアの内陸部(アウトバック)のコミュニティの文化を受け継いでいます。27年間はこの内陸部で働き、生活を家族とともに送っていました。
アボリジニの文化は、Dreaming という世界観が根本にあります。Dreaming は英語圏の人たちは通常持っていない、よって、翻訳のできない種のものです。この世界はどのように創造されたのか。これもDreaming の一つです。アボリジニはそれぞれのコミュニティによって受け継がれている物語が異なります。
ある場所では虹色の蛇が世界を作り出したという世界観を持っています。
アボリジニのもつスピリチュアリティは現代の都市の中でも受け継がれています。
彼女は今は都市に住んでいますが、彼女たちの文化、言葉を子供達にも伝えています。
西洋文化は、家庭で教えなくても学校で教わります。しかし、アボリジニの文化や言葉は家庭で受け継いでいかないと途絶えます。
これは、政府によっても、当然のこととされています。
アボリジニの視点からすると、「なぜ、自分たちの価値観や言葉を教われないのか?」という感じです。
人類史上最も長い歴史を持つ文明が「生き残る」ために培ってきた知恵をなぜ継承しないのか。
まとめ
以上が僕が今回、ヒューマンライブラリーから借りた本です。
それぞれがもっているバックグラウンドからくるそれぞれの視点。
オープンマインドで語り合うことで生まれる共感、理解。
対話の可能性を感じます。
日本でもヒューマンライブラリーを開たいと思ってているので、興味のある人はご一緒しましょう。